ゲームプラットフォームを有するValveから、SteamDeckなる新たなゲーム機がアナウンスされた。現在主要なゲームコンソールと言えば、PlayStation、Xbox、Nintendo Switchだが、ポジションとしてはポータブルかつ外部ディスプレイへの接続を有するNintendo Switchに近い。
Steamから購入したゲームコンテンツのライブラリをモバイル端末として楽しむ事ができ、HDMIケーブル等でTVに映し出して遊ぶこともできる。さてこの製品は果たしてゲーム市場を変えるゲームチェンジャーになるのだろうか?
2021年のゲーム市場
2021年時点でのゲーム人口は年末までに29億人に達するとnewzooのレポートは書いている*。市場割合はMobileが圧倒的で52%・907億ドル。次いでConsole(家庭用ゲーム機)の28%・492億ドル、PCの20%・359億ドルとなっている。前年のレポートと見比べると、PCのシェアを3%奪ってモバイルが過半数を占めて見える。ただ、市場規模の内訳はゲーム内収益による拡大がほとんどのため、純粋なユーザ数を比較するグラフではない。Mobileや、PCは専用機材ではないので、総じてユーザの参入コストは低く、ユーザ人口も圧倒的なのは頷ける。
(*複数端末を使うユーザ、ダブルカウントをどのように集計しているのかは読みきれなかった)
Steam Deckのポジショニング
ディスプレイサイズへの懸念
そうした市況の中、PCとConsoleのハイブリッドのような存在としてSteam Deckは発売される。これは誰をターゲットにしたものなのだろうか? 私は根っからのMacユーザでSteamのライブラリも限定的にしか持っていない為、なおのことピンと来ていないのだが、”グラフィック性能を求めるコアなPCユーザがわざわざモバイルで遊ぶのか?”という疑問が大前提にある。
Nintendo Switchを所有しているが、個人的にはDockから外してモバイル機として遊ぶことはほとんどない。テレビを家族が使っているときにポータブルとして利用したが、慣れた画面サイズがこれだけ違うと、小さい画面には疲れてしまう(歳)。ただ、任天堂の2017年度決算資料によれば、TVモードメインは全体の20%で、携帯モードメインが30%、両方が50%となり私は少数派らしい。
それでも思いつく懸念点として、昨今のPCゲームと同時に発売されるタイトルをコンソールで遊ぶ際、UIや文字の小さは顕著に感じることだ。目の前のディスプレイに向き合う前提のUIを、2m離れたテレビではとても見づらく感じる。これが7インチディスプレイに落とし込まれると、既存のPublisherはそれなりの変更を求められるのではないだろうか? Nintendo Switchはもとより子供が遊ぶ前提で、特に任天堂のタイトルはUIが大きいため成立している。
モバイルゲーマーへの招待
一方で思うのは、巨大なモバイルゲーム市場とはいえ、そこで飽き足らないユーザを取り込む起爆剤にならないだろうか?という観点だ。昨今のスマートフォンの普及は目覚ましいというより、既にインフラの域にあるが、これが一昔前の1990-2010年頃ではPCがその地位にあった。今やスマートフォンがあれば、PCがなくても必要なことはできるため、家にわざわざPCがないという話も聞く。そうしたモバイルゲームユーザがゲームライフのステップアップとして、コンソールゲーム機を検討する際、十分選択肢に入るのではないか?
- Steamのゲームライブラリはコンソール・PCと同じビックタイトルが低価格で手に入る(販路・仲介コストを無くして低価格を実現)
- 同じライブラリをPCゲームへも引き継げる将来的な拡張性
- PSPなき今、メジャーなタイトルをモバイルで遊べる競合がない
という3点はあらためて強みと感じる。既存Steamユーザからの流入は当然のように語られるが、別の受けづらとしても十分に成立する。そういう意味ではMacユーザにとっても、わざわざゲームのためにPCを買う必要がないという点があり、個人的には日本での発売も期待している。
娯楽時間の奪い合い
今やゲーム会社の競合は娯楽産業の全てと言われるぐらい余暇の奪い合いが起きている。Netflixもゲーム市場への参入がちょうど報じられたが、どこでも持ち運べるというデバイスで勝負をかけにきたValveの販売戦略は、とても正しいように思う。
私が最初に買ってもらったゲーム機は任天堂のゲームボーイだった。今の子供が見たら冗談のような画質や性能かもしれないが、そうした画面から物語に想像を膨らませられる良い体験だったようにも思う。娘がゲーム機をせがむ頃には、一体どういう市場になっているだろうか? そうした少し先のゲーム市場を想像する上でも、Steam Deckは興味深い製品だ。